2017.03.29

category: 本のこと

物静かな友人



                       彼も、そして彼女も

                       いつでもただ静かに、そこに佇んでいるのだ。

                       例えばその扉は、いつでも好きな時に

                       開いてもいいように設えてはあるけれど

                       その扉の向こうの住人である彼等は

                       こちらの訪問を促すようなことなど、決してしない。

                       ただただ静かにそこにいる。

                       それでも自らの存在をふわりとさりげなく漂わせて・・・。

                       そして、一たび、その扉を開けば

                       どんな時も温かく迎えてくれ、自らの物語を静かに語り出すのだ。

                       それは、決して押しつけがましいものでもなく、

                       (あなたの感じるままでいいし、途中でこの扉を閉じていいのだよ?)

                       そう無言で語りかけてもくれる。

                       本との時間は、とても安らかだ。

                      





                                                   *写真の本*
                                               『なかなか暮れない夏の夕暮れ』
                                                  江國香織
                                               『扉のかたちをした闇』
                                                  江國香織/森雪之丞
                                               『本を守ろうとする猫の話』
                                                  夏川草介

  




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2017.02.22

category: 本のこと

変わらない・・・そのことへの憧れと尊敬

My favorite books

                         もう何度も読んだというのに

                         相も変わらずページを捲ってしまう・・・

                         私にはそんな本が、いくつかある。

                         何が始まり、何に繋がり、何がどうしてどうなるのか

                         もう一部始終を把握しているし

                         登場人物の台詞さえ、一部そらんじているというのに。

                         そればかりか

                         ドキドキする場面では、ちゃんとドキドキし

                         切ない場面では、決まって切なげな気持ちになるのだ。

                         何度読んでも。

                         たぶん、安心するのだと思う。

                         物語は、その物語のまま

                         姿形を変えずに、そこにあるということに。

                         ページを捲れば変わらぬ姿で迎えてくれるということに。

                         それは、ただ単純に『好き』という

                         気持ちとは別の所にあるような気がする。

                         例えば、アンもメアリーもモモも

                         物語の外側で、時代がどんなふうに変わっても

                         スマートホンを操ったりしないし

                         パソコンの画面に釘付けになったりしない。

                         ある意味、とても安らかだ。

                         進化し続けてゆくこと、変わり続けてゆくことは

                         魅力的だということを認めつつも

                         その一方で、変わらないということを

                         大切に守りたいと思う私がいる。






                         

                         

                         

                         
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2017.02.08

category: 本のこと

小さな教室

A Little Pricess

                         その扉を開くと、その場所は

                         ある日、教室になる。

                         ここ数日の間の私には、小さな女の子が

                         まるで教壇に立つ先生のように

                         大切な何かを伝え寄こしてくる。

                         (結構生きている大人だからって
                          何でも知っているわけではなかったわ・・・)

                         私は、文字を追いながら、心の中で

                         その小さな先生である彼女に言う。

                         まるで恐れ入ったように。

                         事実、そうなのだ。

                         例えば、彼女が言うには・・・

                         顔に血が一気にのぼり、耳もぴりぴりしてきても
                         プリンセスならば、激情に流されてはならない。・・・こと。

                         そのために

                         プリンセスだというふりをすること・・・それは
                         プリンセスらしい振る舞いを心がけるため・・・だということ。

                         なるほど・・・・・。

                         それにしても・・・この物語、かつて小学生の私が

                         読んでいたはずなのに、あの頃と今では

                         心への染み込み方が全然違う。

                         もちろん物語の内容は同じであるはず・・・・・

                         だからこそ本はおもしろいのかもしれない。


                         

        


                 

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2017.01.20

category: 本のこと

王子さまのささやき

little prince

                         本に呼ばれる・・・

                         そんなことが、ままある。

                         この日もそうだった。

                         平積みされたそれから聞こえてくる

                         声なき声のようなもの。

                         「ねえ、待って。僕を連れていかないの?」

                         彼・・・その本はかつて、私のそばにあったものだった。

                         ずいぶん長いこと。

                         逢いたくなると、すぐに逢いに行った。

                         その紙の扉を開いて。

                         子供達の読書感想文の題材にも勧めた。

                         ずっとそばにいてもらうつもりだったのだけど

                         本棚が溢れだしたのをきっかけに

                         (もう手放してもいいかな・・・)そう思って

                         お別れしたのだった。

                         甘く切ない逡巡の果てに・・・。

                         「あなたとの蜜月の時は過ぎたのよ?」

                         私はその彼に言う。

                         まるで、別れる恋人にでも言うみたいに。

                         「でも、あの日々、気づかなかったことも
                         今の君なら気づくことができるかもしれないよ?」

                         小さな彼は、なおも辛抱強く私に言う。

                         『いちばんたいせつなことは、目に見えない』

                         かつて、とどめを刺されたその言葉に

                         時を越えて、再び心を鷲掴みされる。

                         わかった・・・もう一度・・・ね?

                         その彼は・・・

                         その本は、こうして再び私のそばにいる。

                         






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2016.12.22

category: 本のこと

心預ける部屋

My Books2
「時間なんて泥棒よ。意地悪な掠奪者だわ。
すばらしい人から順にこの世から奪っていくんだもの」
『アリスインワンダーランド』より。
 



                         最近本当に、よく本を読んでいる。

                         本は、元々好きだったのだけれど

                         2年くらい前から昨年までの間は

                         読書することからほとんど遠ざかっていた。

                         何しろスマートホンの小さな画面で見る

                         写真の世界にどっぷりと首まで浸かっていたので。

                         だけど、やはり本は素敵だし、大切だ。

                         「見て!見て!」と押しつけがましくアピールしてこないのに

                         一たび開くと、手を引いてその世界に連れて行ってくれるし

                         いろいろなことを、惜しげもなく教えてくれる。

                         私は、なるべく物は増やしたくなく

                         シンプルに暮らしたいと、常々願っているのだけれど

                         本だけは増えても仕方ないかな・・・と思ったりもしている。

                         だってほら・・・本の積み重なった風景は

                         うっとりするほど素敵だ。

                         この本の表紙・・・扉の向こうには

                         それぞれの部屋のそれぞれの住人たちが

                         物語を静かに紡ぎながら、私を待っている。

                         

  





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